021 人為

黒塗りの車。

ナンバープレートなし。

島田香織は唇の端に冷ややかな笑みを浮かべた。もし彼女の予想が正しければ、この事故は間違いなく誰かが仕組んだものだ。

そう考えながら、島田香織は携帯電話を探し始めたが、見つからなかった。彼女は陣内美念を見上げて尋ねた。「私の携帯はどこ?」

陣内美念は脇のテーブルに歩み寄り、携帯電話を取って島田香織に渡しながら言った。「安心して、田村警部が必ず黒幕を突き止めてくれるわ。」

島田香織は陣内美念の言葉を聞いて、携帯を持った手を下ろし、じっと陣内美念を見つめながら、思わず口角を上げて尋ねた。「田村警部?」

話しながら、島田香織はLINEを開き、直接エーさんにメッセージを送って、事故の調査を依頼した。

陣内美念は頬を少し赤らめながら、笑って説明した。「そうよ、田村警部はとても頼りになる人で、仕事も真面目。あなたの件で、もう一晩中眠れてないのよ。後でちゃんとお礼しないとね。」

「そうね、今度田村警部を食事に誘って...」

島田香織の言葉が終わらないうちに、陣内美念はすでに携帯を取り出して電話をかけようとしていた。島田香織に向かって言った。「今すぐ田村警部に電話するわ。」

陣内美念は笑顔で携帯を耳に当て、島田香織に「外で電話してくる」というジェスチャーをして出て行った。

島田香織は今や百パーセント確信していた。陣内美念の言う田村警部はきっとイケメンに違いない。なにしろ、あの親友はイケメンには全く抵抗力がないのだから。

携帯の着信音が島田香織の思考を中断させた。彼女は携帯を耳に当てて尋ねた。「エーさん、事故のことは分かった?」

「調査は終わりました。藤原昭子が人を使って車で轢かせようとしたんです。」

「藤原昭子?」島田香織は眉をしかめた。彼女はずっと藤原昭子を甘やかされた女の子だと思っていたが、まさか法を犯すようなことまでするとは思わなかった。

「はい、藤原昭子と岡田大成との音声会話と送金記録があります。今すぐお送りします。」

エーさんの言葉が終わるや否や、島田香織のメールボックスに新しいメールが届いた。彼女はエーさんにお礼を言って、電話を切った。

島田香織は携帯でメールを開き、藤原昭子と岡田大成の会話を聞きながら、表情が徐々に暗くなっていった。