038 罠はない?

藤原航は少し考えてから、秘書の林楠見が以前持ってきたS+ランクの脚本『戦神』を思い出した。この映画は現在、キャスティング中だった。

「『戦神』のヒロイン役をあなたに演じてもらいたい」藤原航は島田香織を見上げ、平然と言った。「まず脚本を見せることができます。もし良ければ、一緒に仕事をしましょう!」

島田香織は疑わしげに藤原航を上から下まで見つめた。彼がこんなに親切にリソースを提供してくれるとは本当に予想外だった。

彼女は以前、土井家と協力してスターキングエンタテインメント株式会社の行き詰まりを打開しようと考えていたが、今は藤原航が自ら助けを申し出てきた。

島田香織は得られる利益は取るべきという原則に従い、うなずいて言った。「わかったわ。後で林楠見に脚本を私のマネージャーに送ってもらって」

島田香織はそう言うと、ハイヒールで歩き、ドレスの裾を持ち上げて高慢に立ち去った。

島田香織は車に乗り、シートベルトを締めた。陣内美念がまだ発進しないのを見て、不思議そうに尋ねた。「出発しないの?」

陣内美念は心配そうな表情で島田香織を見つめ、急いで言った。「香織、まさか藤原航のような渣男に未練があるんじゃないでしょうね!」

島田香織は笑って、すぐに説明した。「何を考えているの?私が彼に未練なんてあるわけないでしょう?さっきは単なる仕事の話よ!」

陣内美念は「ああ」と言って、車を発進させようとしたが、突然何かを思い出したように、急に島田香織の方を向いて、信じられない様子で尋ねた。「今なんて言った?藤原航があなたと仕事をするって?」

「うん」島田香織はうなずき、軽蔑したような表情で言った。「藤原家の企業には良い俳優がいないみたいね。そうでなければ私に声をかけてくることもないでしょう」

島田香織の言葉を聞いて、陣内美念も強く同意した。この人気至上主義の時代では、演技力のある俳優はますます少なくなっていた。

陣内美念が最も理解できないのは、それらの人気スターたちは演技力もなく、品性もないのに、キャラクター設定だけで金を稼げることだった。

だから芸能界の他の人々がスターキングエンタテインメントを排斥するのは、主に彼らが演技力のある俳優は役に立たないと考えているからだった。

その夜、島田香織がベッドでパックをしていると、奈奈さんからLINEが来た。