藤原昭子は月光の下で「月光の女神」の素晴らしい姿をまだ覚えていた。もし彼女が「月光の女神」を着ることができれば、塩谷麻衣は必ず彼女のことを好きになるはずだと思った。
先ほどメイドが持ってきたドレスが気に入らなかった理由が、やっと分かった。きっと「月光の女神」と比べてしまったからだ。
藤原昭子は唇の端を少し上げ、車のキーを手に取り、迷うことなく藤原家の会社へと車を走らせた。
藤原グループの社員は皆、藤原昭子のことを知っていたので、彼女を止めることはなかった。
藤原昭子は藤原航のオフィスに直行し、彼がまだ契約書を見ているのを見て、媚びるような笑顔を浮かべながら駆け寄り、甘えた声で言った。「お兄さん、『月光の女神』を貸してくれない?」
藤原航の冷たい瞳に一瞬不快な色が浮かんだが、すぐに落ち着きを取り戻した。彼は目を上げて藤原昭子を見つめ、言った。「もう人にあげたよ。ドレスが欲しいなら、服飾部で自分で選びなさい!」