翌日の午後、島田香織は会社で台本を読んでいた。今や彼女は人気者で、多くの広告やドラマのオファーが来ていた。
島田香織の評判は良くなかったが、広告や台本の選択には慎重だった。彼女は人気タレントではなく、女優として生きていきたかった。
そのとき、奈奈さんから電話があり、藤原おじいさんが彼女を訪ねてきたと聞いて、最初は聞き間違いかと思った。電話で奈奈さんが繰り返したとき、やっと聞き間違いではないと分かった。
彼女は藤原のじじいに会いたくなかったが、すでに会社に来ていたので、仕方なく会うことにした。
藤原航との離婚後、島田香織は藤原おじいさんに会っていなかった。
以前藤原家にいた時、藤原航の母親以外の藤原家の人々は、みな彼女に嫌がらせをしていた。
義理の妹の藤原昭子は言うまでもなく、昭子の言葉によれば、二番目の兄がどんなに悪くても、田舎出身の素性の知れない女と結婚するはずがない、と。
藤原おじいさんも手ごわい相手で、嫁いだばかりの時から家訓を押し付けられ、礼儀作法を教え込まれた。藤原おじいさん本人も常に彼女を監視し、少しでも間違えれば罰が待っていた。
島田香織が藤原家に嫁いだ最初の一年は本当に苦労の連続だった。しかし、その後は自分を守る方法を学び、少しは楽になった。
島田香織は今はただお金を稼ぎたかった。藤原家のクズどもなど、目にも入れたくなかった。目が汚れるのが怖かったからだ。
しかし、思い通りにはいかず、藤原おじいさんが直接訪ねてきた。
島田香織はハイヒールを履いて応接室に向かうと、藤原おじいさんと藤原昭子がソファに座っているのが見えた。
「島田香織!」藤原おじいさんは島田香織を見るなり、顔色が一変し、何もないテーブルを指差して怒鳴った。「お前の会社はこれが接客か?」
島田香織は反対側のソファに座り、すぐに社員が緑茶を持ってきた。
藤原おじいさんと藤原昭子にお茶が出なかったのは、完全に彼女の指示だった。結局のところ、自分のものを藤原家の人に使わせるわけにはいかなかった。