島田香織の化粧を担当したのは相変わらず鈴木先生で、彼女は鈴木先生のことが大好きだった。他の人とは違って偏見を持って人を見ないからだ。
鈴木先生は島田香織にファンデーションを塗りながら、笑顔で言った。「あなたの肌は本当にきれいね。今日、一般人があなたの朝食シーンを撮った写真を見たけど、とても素敵だったわ!」
島田香織は「朝食」という言葉を聞いて、朝に大勢の人に囲まれて息もできないほどだったことを思い出し、言った。「あんなに多くの人に認識されるとは思わなかったわ。」
「演技が上手いから、きっとたくさんの人があなたのファンになるわ。芸能界は視聴率が物を言うけど、演技力のある俳優こそが皆に愛されるのよ。」鈴木先生は眉筆を持って、真剣に島田香織の眉を描いた。
島田香織は午前中ずっと撮影をしていたが、冬はまだ来ていなかった。お昼ご飯の時間になってようやく、冬がゆっくりとやって来た。
冬は外から弁当を持って入ってきて、島田香織の前に置いた。周りに誰も注目していないのを確認すると、椅子を引いて島田香織の隣に座り、興奮した様子で言った。「お嬢様、私たち、大当たりですよ!」
島田香織はお腹が空いて前後がくっつきそうだったが、冬の言葉を聞いて淡々と微笑んで言った。「うん、私は『スターロード』が受賞できることを願ってるわ!」
実際、島田香織は『スターロード』の興行収入にはそれほど大きな期待を持っていなかった。アカデミー主演女優賞と比べれば、興行収入は重要ではなかった。
「絶対に受賞できますよ」冬は笑うと目が三日月のように細くなり、続けて言った。「お嬢様、奈奈さんの予想では、この映画は30億円の興行収入を上げられるそうです。」
島田香織は心の中で静かに計算した。30億円なら、運営費用はそれほどかかっていないし、スターキングエンタテインメントと藤原家のシネマで全ての興行収入を得られる。映画の制作費2億円を差し引いても、税引き前で28億円の利益が出る。
スターキングエンタテインメントは6億円で太陽映画館を買収した。島田香織は唇の端をわずかに上げ、笑って言った。「映画がそれだけ稼げることを願うわ。」
9日目、『スターロード』の一日の興行収入は3億円に達した!
藤原家のシネマも他の作品を下げ、『スターロード』だけを上映することにした。