073 眠くなった

ハリウッドには美しくて演技の上手な女優が数多くいて、クラウスに憧れる女優も数え切れないほどいるが、クラウスには魂の共鳴を感じる女優が一人もいなかった。

島田香織とクラウスの席は隣り合っていなかったので、入場後、二人は別々の席に座った。

島田香織が座ったばかりの時、二人の若い白人のイケメンが近づいてきて、飲み物や服を届けてくれた。彼女の体調を気遣った後、島田香織が呆然としている表情のまま去っていった。

Z国の生配信では当然、島田香織を中心に撮影していた。視聴者たちは彼女のぼんやりした様子を見て、思わず冗談を言い始めた。

「島田香織、呆然としてる。まさか自分のファンだって分かってないんじゃない?」

「島田香織の待遇、まさに女神様だね!」

「島田香織、すごく天然だね。こんな性格だとは思わなかった、可愛い!」

……

遠くに座っているクラウスは、その二人の白人青年を羨ましそうに見ていた。彼らの服のロゴから、島田香織のファンだと確認できた。

クラウスの隣に座っているトムは眉をひそめ、呆れた様子だった。

アカデミー賞授賞式は厳粛な場であり、ファンが入場できるとは本当に予想外だった。

島田香織が一番感謝していたのは、ダウンジャケットを届けてくれたことだった。会場内はエアコンが効いていたが、それでも寒かったので、急いでダウンジャケットを羽織った。

ネットユーザーが島田香織がおとなしく座って待っているだろうと思っていた時、彼女がスマートフォンを取り出してゲームを始めるのを見た。

「ハハハ、私もそうだよ、待ち時間は絶対に無駄にしない!」

「その通り、ゲーマー少女、頑張れ!」

「世界のもう一人の私、@王者栄耀、早く島田香織を広告モデルにして!」

「@島田香織、広告料ゲットだね!」

……

島田香織本人は、上原良子を操作して、手際よく1対3の戦いを繰り広げていた。

島田香織が2試合プレイし終わった頃、ようやくアカデミー賞授賞式が始まった。

司会者がオープニングショーを披露し、会場全体を笑いの渦に巻き込んだ後、正式に授賞式に入った。

この時、島田香織は少し眠くなっていた。

今朝早く起きて、今はダウンジャケットを着て、膝の上には毛布もあり、とても快適で、自然と瞼が重くなってきた。