090 炎上してしまった

「藤原航、お前は林杏と同じように気持ち悪い。吐き気がするほど気持ち悪い!」

「一人は彼女の姉、兄の嫁を愛し、もう一人は夫の弟、妹の彼氏を愛している。お前たち二人は本当に、クズと犬のお似合いのカップルだ」

島田香織の言葉が耳に残っていた。藤原航が我に返った時には、廊下には彼一人しかいなかった。彼は震える指でエレベーターのボタンを押した。

藤原航は車の横まで歩いたが、鍵を差し込むことができなかった。彼は携帯を取り出して林楠見に電話をかけた。彼の手は震え続けていた。

可哀想な林楠見は帰宅して寝ようとしていたところだったが、藤原航からの電話を受けて、すぐにタクシーを拾って駆けつけた。

「オフィスまで送ってくれ」藤原航は車の鍵を林楠見に投げ、淡々と言った。ポケットに入れた両手は依然として震えていた。