「口を開けて」陸田健児は笑いながら島田香織を見つめた。
島田香織が反応する前に、口は既に少し開いていた。
気づいた時には、島田香織はその一匙のお粥を口に含んでいた。
島田香織の耳が思わず赤くなり、熱のせいで杏のような瞳に薄い霧がかかったように見え、とても可愛らしく儚げだった。
島田香織は顔を赤らめながら陸田健児に一杯のお粥を食べさせてもらい、やっと「ありがとう」と言った。
「香織、僕たちの間にお礼なんて要らないよ」陸田健児は島田香織の真っ赤な顔を見つめながら、声を低くして言った。「君が僕が側にいることに慣れてくれるだけでいい」
島田香織はまだ熱があり、額に触れる彼の手の感触を感じた。彼の手は少し冷たく、触れられた場所がとても心地よかった。
昼になり、島田香織が点滴を終えると、陸田健児は彼女と一緒に退院した。彼女は病院の消毒液の匂いが苦手だった。