陣内美念は思わず口角が上がり、笑いながら言った。「違うの、彼が作ったの」
島田香織は好奇心いっぱいの表情で陣内美念を見つめ、彼女の頬が赤くなるのを見て、すぐに気づいて言った。「田村警部?」
「うん、仕事が終わって、今日は休みだから。私が香織さんが病気だって言ったら、ご飯を作って持ってきてくれたの!」陣内美念は満面の笑みを浮かべ、すっかり恋に落ちた様子だった。
「あなたが幸せならそれでいいわ」島田香織は陣内美念のことを全く心配していなかった。というのも、彼女の印象では、陣内美念が人をいじめることはあっても、いじめられることはないからだ。「彼が食事を持ってきてくれたなら、一緒に食べるように誘えばよかったのに?」
「今日は私、一緒にご飯食べられないの。あなたは一人で食べて。私は彼と外で食事して、素敵な夜を過ごすつもり」
陣内美念はそう言って立ち上がり、時計を確認してから、「奈奈さんがもうすぐ来るから、私は安心して行けるわ。何かあったら直接電話してね」
「わかった」島田香織は笑顔で答え、陣内美念を見送ってから、一人でソファに座って食事の準備を始めた。
病床に置いてある携帯電話が鳴り出した。島田香織は携帯を手に取り、画面も見ずに出た。「もしもし?」
「どうしたの?」
電話の向こうから男性の魅力的な声が聞こえてきた。
島田香織は一瞬固まった。陸田健児からの電話だと気づき、口の中の食べ物を飲み込んでから言った。「何でもないわ」
「病気なの?」陸田健児は眉をひそめ、心配そうに尋ねた。
「もうほとんど良くなったわ」島田香織は一日中寝て点滴を打ったおかげで、確かに楽になっていた。
「今どこにいるの?」陸田健児は追及するように聞いてきた。
島田香織は我に返り、口の中の食事を飲み込んでから、笑いながら言った。「今ご飯食べてるの。もう切るわ!」
そう言って、島田香織は急いで電話を切った。
しばらくして、ノックの音が聞こえた。奈奈さんが来たと思い、「どうぞ」と言った。
陸田健児が保温弁当箱を持って外から入ってきた。ベッドの上で携帯をいじっている島田香織の姿が目に入った。
「もっと休んだ方がいいよ」陸田健児は島田香織の前まで歩み寄り、保温弁当箱をベッドサイドテーブルに置いた。