098 良い男

島田香織は陸田健児の不思議そうな言葉を聞いて、無理に笑顔を作って言った。「病院には入院したくないの」

陸田健児はバックミラーに映る島田香織を見て笑い、思わず口角が上がった。車を島田香織の家まで走らせ、駐車場に停めると、島田香織を支えながら一緒に階段を上がった。

島田香織はソファーに疲れた様子で座り、窓から差し込む陽の光を浴びていると、その暖かさで再び眠くなってきた。「送ってくれてありがとう。私は自分で自分の面倒を見られるから」

島田香織の言外の意味は「もう帰っていいよ」というものだったが、陸田健児はその暗示に気付かなかったようで、隣に座って島田香織を見ながら笑って言った。「寝ていいよ!」

島田香織は一瞬固まった。陸田健児に帰ってもらおうと思った矢先、陸田健児が続けて言った。「まだ熱が下がってないから、奈奈さんが来るまでここにいるよ」

島田香織は陸田健児の言葉を聞いて、だるそうにソファーに横たわった。一人掛けソファーに座る陸田健児の顔を見つめていると、どこかで陸田健児によく似た人を見たような気がした。

意識が徐々に遠のいていき、島田香織はうとうとと眠りに落ちた。

……

陣内美念はお腹が空いて目が覚めた。お腹を押さえながらベッドから起き上がると、田村警部が笑顔で彼女を見ていた。「お腹空いたでしょう!」

陣内美念は昨夜のある男性とのベッドでの激しい行為を思い出し、顔を赤らめながらベッドから起き上がった。身支度を整えた後、田村警部と一緒にダイニングテーブルで食事をした。

食事中、陣内美念は携帯をチラッと確認した。トレンド入りしている内容を見た彼女は、近くにあったティッシュで口を拭い、真剣な表情で言った。「ねぇ、香織のところに行かなきゃ。何かあったみたい」

「じゃあ、もう少し食べてから送っていくよ」田村警部は陣内美念の茶碗におかずを取り分けながら、愛おしそうに彼女を見つめた。

陣内美念は仕方なくもう少し食べ、それを平らげると急いで玄関へ向かった。

奈奈さんから島田香織が既に自宅にいると聞いた陣内美念は、田村警部に急いで送ってもらうよう催促した。

彼女は島田香織の家の予備の鍵を持っていたので、そのまま開けて中に入った。

この時間、リビングには暖かな日差しが差し込んでいて、ドアを開けると香ばしいお粥の香りが漂ってきた。