103 ずっとあなたと結婚したかった

林杏は林桃子の慌てた様子を見て、彼女の方へ歩み寄り、手に持っているスマートフォンを奪おうとした。

林桃子は手首を切って自殺を図ったため、手首を動かすと痛みが走り、力が入らず、林杏に携帯を奪われるのを見ているしかなかった。

「島田香織がSNSに投稿したわ」林桃子はこの件がもう隠せないことを知っていた。彼女は林杏を見上げ、懇願するように言った。「お姉さん、私どうすればいいの?助けて。助けてくれたら、私の財産の三分の一をあげるわ」

林杏は目をきらりと光らせた。この世の中、お金は多ければ多いほどいい。今は彼女と林桃子と島田香織の三人が藤原家の次男の奥様の座を争っている。

もし彼女が藤原航と結婚できれば藤原家の次男の奥様になれる。もし結婚できなくても、藤原家の長男の奥様として、位牌を抱いて生きていける。

攻めるも守るも自由なのだ。

島田香織は藤原航と離婚した。藤原航は元々島田香織のことが好きではなかったし、島田香織はもう藤原家の次男の奥様の座を争う資格はない。

今は彼女と林桃子の二人で藤原家の次男の奥様の座を争うことになる。

林杏はスマートフォンを見下ろし、目に計算高い光を宿して言った。「あなた…」

林杏の言葉が終わらないうちに、入り口から冷たい男性の声が聞こえた。

「SNSが賑やかだな」

林桃子と林杏は二人とも顔を向けた。林杏は平静を装いながらも、目に嫉妬の色が浮かんだ。藤原航は本当に林桃子のことばかり考えているのだ。六億円も使って林桃子のためにあの件を解決するなんて。

「藤原の次男様、桃子に会いに来られたのですか?」林杏は明るい笑顔を浮かべ、藤原航を見つめた。藤原航の冷たい視線に出会っても、彼女は恐れる様子もなく、「桃子があなたに話があるそうです。私は先に失礼します」

林杏はハイヒールで優雅に病室を出て行った。彼女は藤原家で長年過ごし、藤原家の人々から深く愛されている。今彼女がすべきことは、藤原航の心に思いやりのある印象を残すことだ。時間が経てば、必ず藤原航の冷たい心を温めることができるはずだ。

林杏が去り、空間は藤原航と林桃子二人きりになった。

林桃子は涙目で藤原航を見つめ、委屈そうに言った。「航兄さん、私…」

「何が欲しい?」藤原航は冷たく立ったまま、無表情で林桃子を見つめた。