陣内美念は慌てて追いかけ、ドアを閉めるのも忘れずに、島田香織が陸田健児の話をしたくないのを知って、話題を変え、興奮した表情で言った。「いいニュースがあるわ。藤原のじじいが怒りで入院したのよ!」
島田香織は横目で陣内美念を見て、思わず口角を上げて言った。「今知ったわ」
「藤原おじいさんは絶対に林桃子を藤原家に入れることを認めないわ!」陣内美念は得意げに言った。「彼女は姉と同じよ。偽善的な白蓮の花!」
「それはどうかしら」島田香織の顔から笑みが消え、藤原航のことを思い出すと、心の奥が痛んだ。「藤原航が望めば、林桃子は必ず晴れやかに藤原家に入れるわ!」
陣内美念の笑顔が凍りついた。彼女は心配そうに島田香織を見つめた。
島田香織の言う通りだった。藤原航は藤原家で大きな発言権を持っていて、藤原航が望めば、他の家族も何も言えない。唯一厄介なのは藤原おじいさんだけだった。
藤原おじいさんは絶対に林桃子を藤原家に入れたくないはずだ。これからは藤原航と藤原おじいさんの対決になりそうだ!
「藤原航は林桃子のためなら、お金を惜しまないわ」島田香織は昨夜藤原航が彼女に渡した六億円を思い出し、顔が徐々に暗くなった。「藤原おじいさんは十分な利益があれば、きっと承諾するわ」
島田香織はそう言って、クローゼットに向かって歩き出した。
陣内美念は島田香織を見上げて、不思議そうに尋ねた。「どこに行くの?」
「会社よ。処理しなければならないことがたくさんあるの!」島田香織は二歩歩いて、藤原航が投資した映画の仕事も引き受けていたことを思い出し、急に気分が悪くなった。
陣内美念は自分の会社のことを思い出し、長い間行っていなかったので、島田香織に一言告げて出て行った。
島田香織は服を着替えてエレベーターに向かった。エレベーターに着いたところで、林杏が静かに中から出てくるのを見た。彼女はエレベーターに向かって歩き出し、林杏に目もくれなかった。
「島田さん」林杏はすぐにエレベーターに乗り込み、島田香織を見上げて、急いで言った。「お茶をご一緒させていただけませんか?」
林杏の言葉を聞いて、島田香織は横を向いて林杏を見た。断ろうとした時、林杏の低姿勢な懇願の声が聞こえた。
「お願いします」