125 面白いものを待つ

藤原航は富田悠太に冷たい視線を送り、ワイングラスを持って別の場所へ向かった。

富田悠太は藤原航の背中を見送り、視線を島田香織に戻すと、顔から笑みが消え、ため息をつきながらワイングラスを手に島田香織の方へ歩み寄った。

富田悠太はワイングラスを陸田健児のグラスと軽く合わせ、島田香織の方を向いて褒め言葉を述べた。「島田お嬢様、今日は本当にお綺麗ですね!」

島田香織は表情から笑みが薄れ、丁寧に「ありがとうございます」と言い、陸田健児を見て「お話しください」と言った。

島田香織はそう言うと、すぐに立ち去った。

陸田健児はその様子を見て、島田香織の後を追おうとしたが、富田悠太に行く手を阻まれた。

「陸田若様、行かないでください。久しぶりですから、一緒に飲みながら昔話でもしませんか?」富田悠太は無邪気な笑顔を浮かべ、手にしたワイングラスを掲げ、本当に陸田健児と飲もうとしているかのようだった。

「富田若様、用事がありますので、昔話は改めて私がご馳走させていただきます。今は失礼させていただきます!」陸田健児は表面上は笑顔を保ちながらも、目には冷たい光を宿していた。

陸田健児の言葉を聞いて、富田悠太の笑顔はさらに明るくなった。彼は意図的に陸田健児と島田香織の邪魔をしに来たのだ。「改めてなんて必要ありません。今日にしましょう!」

陸田健児の表情から笑みが薄れ、富田悠太を見つめながら何気なく尋ねた。「航に頼まれたんですか?」

「陸田若様、何を言っているんですか。私が貴方とお話ししたかっただけです。これが航とどんな関係があるんですか?」富田悠太はにこやかに答えた。

陸田健児は平然と富田悠太を見つめ、唇の端にかすかな笑みを浮かべ、冷ややかな視線を向けた。

富田悠太はその視線に気後れし、周囲を見回すと島田香織の姿はもう見えなくなっていた。陸田健児はしばらく島田香織を見つけられないだろうと考え、目的は達成されたと思い、何か言い訳を考えて立ち去ろうとした時、突然遠くから悲鳴が聞こえ、その方向へ足を向けた。

島田香織はワイングラスを持って立ち去り、軽食を取ろうとしていたが、藤原昭子たちが動き出したところだった。

「あっ!」富田玲は申し訳なさそうな表情で島田香織を見つめ、深々と頭を下げ、誠意を込めて謝罪した。「申し訳ございません、わざとではなかったんです。」