133 藤原航に一目惚れして人生を誤る

島田香織は唇の端をわずかに上げ、少し考えてから「36、36」と言った。

陸田健児は島田香織の目を覆っていた手を離し、二人で座標を数えると、バスケットボールのシュートマシンが見えた。

島田香織はシュートマシンを見つめ、瞳が暗くなり、冷たい表情で「もう帰りたい」と言った。

島田香織はそう言うと、外へ向かって歩き出した。

陸田健児は島田香織の前に立ちはだかり、首を傾げて「嫌いなの?」と尋ねた。

島田香織は陸田健児を見上げ、軽く微笑んで「少し疲れたから、帰りたいの」と言った。

陸田健児が島田香織の頭を撫でようとした時、島田香織はそれを避けた。

陸田健児は何も言わず、笑顔を浮かべながら頷いて「わかった、送っていくよ」と言った。

帰り道の車内は、沈黙に包まれていた。

彼女のマンションに着いた時、陸田健児は車を止め、まだハンドルを握りながら島田香織の方を向いて、低い声で「僕に怒ってるなら、はっきり言ってくれていいよ」と言った。

「送ってくれてありがとう」島田香織はそう言って車を降り、ドレスと靴を手に持っていた。

彼女は怒っているわけではなく、ただ陸田健児が怖かった。

最初にゲームセンターに着いた時は楽しかったが、シュートマシンを見た時、かつて自分が言った言葉を思い出した。

彼女は藤原航との一目惚れだった。

15歳の時、彼女は陣内美念とこっそりバスケットボールをしに行った。

「美念、ね、このシュートが入ったら、将来藤原航と結婚できるってことだよ」15歳の彼女は真剣な表情で言った。

ボールは入った。

そして彼女は願い通り藤原航と結婚した。

でも今は藤原航と離婚している。

島田香織は車を降り、ドアに手をかけながら陸田健児を見上げ、笑顔を見せて「ありがとう」と言った。

陸田健児は心配そうに車から降り、島田香織の前に立ち、真剣な表情で「怒ってるなら、僕にぶつけてくれていいんだ。僕は…」

「もう行くわ」島田香織は躊躇なく陸田健児の言葉を遮り、マンションの中へ歩き出した。

彼女もシュートマシンを見てある事実に気付いた。もうこれ以上陸田健児に対してこんな態度を取るべきではない。陸田健児はますます深みにはまっていくだけで、彼女は同じ気持ちで応えることができない。

これからは少し距離を置こう!