143 クズ男

藤原航は富田悠太の言葉に困惑し、習慣的に鼻筋を摘んで、不思議そうに尋ねた。「何を言ってるんだ?俺がいつ漫画のことをネットに投稿したって?」

「お前が暴露したんじゃなかったら誰が暴露したんだ?今すぐウェイボーを見てみろよ。みんなこのことを知ってるぞ。俺はずっとお前が島田香織のことを好きだと思ってた。お前は絶対に彼女を傷つけないと思ってたのに、今や全世界に彼女を非難させ、無実の罪を背負わせようとしている。お前は人間じゃない!」

富田悠太は話せば話すほど腹が立ってきた。「島田香織がどれだけ酷い罵倒を受けているか分かってるのか?不倫だの横取りだの...」

富田悠太の言葉が終わらないうちに、電話から話中音が聞こえてきた。彼は携帯を見て、陣内美念の言う通りだと思った。藤原航は本当に最低な男だ!

藤原航は富田悠太との通話を切った後、携帯を取り出してウェイボーにログインし、トレンドを一瞥した。瞬時に表情が暗くなった。

彼は全身から冷たい雰囲気を漂わせ、万年筆を強く握りしめた。

彼はこれらの事を利用して島田香織の傷に塩を塗るつもりは全くなかった。そもそも当時、彼は島田香織に好意を持っていた。

しかし今やネット上は島田香織を罵倒する声で溢れている。

片思いは本来美しいものなのに、ネットユーザーの目には吐き気を催すような忌まわしいものとなっていた。当時、島田香織が止むを得ず彼と結婚したことも卑劣だと非難されていた。

藤原航はそれらのコメントを見ながら、胸に大きな石が乗っているかのように息苦しさを感じていた。

彼はずっと島田香織への好意を打ち明けられなかった。それは林家の人に移り気だと言われるのを恐れてではなく、ネットユーザーに渣男と呼ばれるのを恐れてでもない。ただ島田香織の安全を心配していただけだ。島田香織が生きていられるなら、他のことは何も気にしなかった。

しかし今になって一つのことに気付いた。自分の無能さ、弱さ、そして多すぎる懸念のせいで、島田香織に多くの非難を背負わせてしまったのだ。

今や藤原家の全てが彼の掌握下にある。彼は島田香織に伝えたかった。ずっと彼女のことが好きだったと。

藤原航は携帯を取り出して島田香織に電話をかけようとしたが、彼女の電話番号を見て指が躊躇い、結局かけなかった。