165 再び藤原家へ

「帰るわ」島田香織は言いながら、階段に向かって歩き出した。陸田健児が後をついてきたのに気づいたが、何も言わなかった。

一階のホールに戻るにはこの道しかないのだから。

島田香織が宴会場に戻ると、奈奈さんが近づいてきて、香織の後ろにいる陸田健児に目を向け、かすかに唇の端を上げた。

奈奈さんは香織の側に来ると、声を潜めて言った。「島田お嬢様、車が玄関に到着しています」

島田香織は顔に明るい笑みを浮かべ、足早に外へ向かった!

島田香織が宴会場を早めに去ることについて、その場にいた人々は皆察していた。彼らが今夜香織をいじめなかったのは、完全に香織のパトロンへの配慮からだった。

島田香織は車で宴会場を後にし、家に帰ると、母の江田景がソファーでドラマを見ているところだった。

「お母さん!」香織は急いで近寄り、甘えるように江田景を抱きしめた。

江田景は最新のファッションに身を包み、首にはサファイアのネックレスを、耳元にはそれに呼応するサファイアのピアスをつけ、全身から優雅な雰囲気を漂わせていた。

傍らの島田根治はスーツ姿で、先ほど外ではサングラスをかけていて四、五十代に見えたが、今はサングラスを外し、三十代前半くらいに見えた。

江田景は香織を抱きしめ、優しく背中をさすりながら、感動した声で言った。「香織、ママ会いたかったわ。昨日は広告の撮影があって帰れなかったけど、今日はゆっくり見られて良かった」

そう言いながら、江田景は香織を少し離し、香織の少し丸みを帯びた顔を見て、目が瞬時に赤くなった。

以前香織が家に戻ってきた時は、骨と皮だけの人間とも思えない姿だった。一ヶ月休暇を取って香織と遊び歩き、さらにお手伝いさんに毎食栄養たっぷりの料理を作らせ、ようやく香織の顔色が良くなってきたのだ。

江田景の今の唯一の願いは香織が太ることだった。彼女は島田根治の方を向いて言った。「前は貴方と香織が私を騙しているんじゃないかと疑っていたけど、今香織を見て安心したわ」

香織は笑いながら、江田景の腰に抱きつき、甘えた声で言った。「お母さん、パパがお母さんを騙すわけないでしょう?」

「それはどうかしら」江田景は冷ややかに言い、携帯の時間を確認して言った。「もう8時よ。さあ、行きましょう」

「行く?」香織は困惑した表情で江田景を見つめた。