165 再び藤原家へ

「帰るわ」島田香織は言いながら、階段に向かって歩き出した。陸田健児が後をついてきたのに気づいたが、何も言わなかった。

一階のホールに戻るにはこの道しかないのだから。

島田香織が宴会場に戻ると、奈奈さんが近づいてきて、香織の後ろにいる陸田健児に目を向け、かすかに唇の端を上げた。

奈奈さんは香織の側に来ると、声を潜めて言った。「島田お嬢様、車が玄関に到着しています」

島田香織は顔に明るい笑みを浮かべ、足早に外へ向かった!

島田香織が宴会場を早めに去ることについて、その場にいた人々は皆察していた。彼らが今夜香織をいじめなかったのは、完全に香織のパトロンへの配慮からだった。

島田香織は車で宴会場を後にし、家に帰ると、母の江田景がソファーでドラマを見ているところだった。

「お母さん!」香織は急いで近寄り、甘えるように江田景を抱きしめた。