171 私は愛人なの?

「私が愛人だって?」島田香織は怒りと共に嘲笑い、藤原航の方を向いて詰問した。

リビングの空気は既に一触即発の状態だった。

全員の視線が藤原航の顔に注がれていた。全ては藤原航が原因だった。

藤原航の漆黒の瞳は静かに島田香織の顔に注がれ、両手が軽く握り締められた。

「違う」藤原航は無表情で言った。

島田香織は複雑な表情で藤原航を見つめた。彼女は自分の耳を疑った。以前なら、こういう事態になると、藤原航は真っ先に彼女に藤原昭子への謝罪を強要したものだった。

藤原昭子は目を丸くして藤原航を見つめた。彼女は二番目の兄が島田香織の味方をするなんて信じられなかった。

以前なら、こういう状況になると、兄は必ず島田香織に謝罪を強要したものだった。

やはり、二番目の兄は島田香織のことが好きなのだ。