陸田弥介の言葉を聞いて、島田根治は一瞬固まった。何も言わずに、再び陸田健児とその女性の写真を取り出した。
よく見ると、確かに安田暖香だった。
島田根治は思わず顔を赤らめた。
本当に恥ずかしい限りだった。
島田根治は電話を切り、部屋の中へ向かうと、ワイングラスを持った江田景が近づいてきた。「何かあったのか?顔色が良くないようだが」
「あの女性は結婚していて、陸田健児の義姉だ。香織に伝えておいてくれ、誤解しないように」島田根治は陸田健児という若者が気に入っていた。以前、彼のことを細かく調べ、スキャンダルや幼なじみの恋人がいないことを確認していたのだ!
江田景は島田根治の言葉を聞いて、笑いながら頷き、写真をもう一度見て、陸田健児の隣に立っている女性が安田暖香だと分かった時、思わず口角が上がった。
島田香織は江田景からの電話を受け、安田暖香が陸田健児の叔父の兄の妻だと知り、思わず笑い出した。「パパラッチって本当に職業倫理がないわね、いい加減な報道ばかり!」
「藤原のじじいと藤原昭子は各プラットフォームで文章での謝罪をしたが、謝罪動画はまだ出していない」江田景はここまで話すと、表情が少し曇った。「私とお前の父さんで藤原のじじいを圧迫することを考えている」
島田香織は少し驚いたが、「分かりました」とだけ言った。父と母が藤原航に直接手を出さなかったのは、自分の面子を立ててくれたからだと分かっていた。
陸田健児のスキャンダルがほぼ収まり、島田香織もこの件をほとんど忘れかけていた頃、藤原航がまだこの件を気にしていたとは思わなかった。
島田香織は夜に陣内美念との食事の約束があり、ホテルの個室に着いた時、藤原航が向かいの個室から出てきた。
島田香織は藤原航と話す必要はないと感じ、彼とのこれ以上の関わりを避けたかった。店員がドアを開けるのを見て、中に入った。
「友達を待っているので、後で注文します」島田香織は振り返って店員に笑顔を向け、店員を下がらせた。
彼女は個室でゲームをしていて、ドアが開く音を聞いても顔を上げずに言った。「美念、聞いてよ……」
島田香織はちょうどゲームに勝ち、顔を上げると、藤原航が勝手に隣の席に座っているのが見えた。
島田香織は眉をひそめた。こんな素敵な夜が藤原航によって台無しにされ、瞬時に気分が悪くなった。