彼女が立ち上がったとたん、足がふらつき、制御不能のように横に倒れかけた。
陸田健児は素早く島田香織を抱きとめ、抱き上げて寝室へと向かった。
「そんなに遠慮することないよ」陸田健児は真剣な表情で島田香織を見つめながら言った。「僕は見返りを求めてこれをしているわけじゃないから、気兼ねなく受け入れてくれていいんだ」
陸田健児のその言葉を聞いて、島田香織は顔を青ざめさせた。彼女は陸田健児を見つめながら、何年も前の自分を見ているような気がした。
「こんなことじゃ愛は手に入らないわ」島田香織は目を伏せながら、小声で言った。
彼女自身がそれを経験してきたからこそ、陸田健児に自分のような道を歩んでほしくなかった。
「それがどうしたの?」陸田健児は顔を下げて、島田香織に真剣な表情で尋ねた。
島田香織は目を上げて、陸田健児にゆっくりと言った。「無駄なことがあるの。いつか私の言葉の意味が分かるわ」
「分かりたくないよ」陸田健児は島田香織に微笑みかけながら続けた。「僕が君を好きなのは僕の勝手だから、気にしないでほしい。それに僕の将来のことを心配しないで。私たちに未来がないなんて、どうして分かるの?」
彼は本当に自信に満ちていた。
島田香織はもう何も言えなくなった。
陸田健児は島田香織をそっとベッドに寝かせ、布団をかけてから、部屋を出て行った。
島田香織はずっとベッドに横たわっていた。生姜湯が効いたのか、お腹の痛みは和らいでいた。
彼女は陸田健児の言葉を考えながらうとうとし、すぐに眠りについた。
翌朝、島田香織が目を覚ましたとき、お腹の痛みはほとんどなくなっていた。
家には彼女一人だけが残されていたが、食卓には保温容器に入ったお粥が置いてあった。
テーブルにはメモも置いてあった。
陸田健児:朝ご飯を忘れずに。
島田香織は椅子を引いて、テーブルに座ってお粥を一杯食べてから、片付けを済ませ、車で会社へ向かった。
島田香織が会社に着くと、奈奈さんが駆け寄ってきて、手に持った書類を彼女の前に差し出しながら言った。「島田お嬢様、これは過去二日間で締結した契約書です。何か問題がないかご確認ください」
島田香織は机に座り、契約書を丁寧に確認してから、最後のページにサインをした。
「この数日間、ご苦労様でした」島田香織は笑顔で奈奈さんを見た。