203 出手

藤原昭子は車椅子に乗ってエレベーターから出てきた。藤原おじいさんが怒り狂っている様子を見て、唇の端がかすかに上がったが、すぐに顔から笑みを消した。

「おじいさん、あの写真はSNSから流出したものです!」藤原昭子は車椅子を操作しながら藤原おじいさんの前に進み、焦りながら言った。「島田香織さんはもう陸田健児さんと付き合っているんですか?」

藤原おじいさんは携帯から視線を外し、藤原昭子に目を向けて言った。「もういい。この件にはお前は関わるな。今のお前の仕事は勉強に専念することだ。」

藤原昭子は素直そうに頷いて、車椅子を操作して立ち去った。

藤原おじいさんは藤原昭子の後ろ姿を見つめ、瞳に一筋の不安が走った。彼は以前、藤原昭子の足を折るよう命じ、すぐに医者を呼んで接合させた。その際、藤原昭子の足が折れた写真をネットに投稿したが、他の芸能ゴシップに埋もれて、SNS上では全く話題にならなかった。

藤原おじいさんはイライラが募り、直接藤原航に電話をかけた。

電話が繋がるとすぐに、藤原おじいさんは抑えきれずに言った。「航、昨夜島田香織に謝ったんじゃなかったのか?なぜ陸田健児が昨夜、島田香織の家に泊まったんだ?」

オフィスで契約書を見ていた藤原航は、藤原おじいさんの言葉を聞いて苛立ちながら床から天井までの窓の前に歩み寄り、冷たい表情で言った。「私と島田香織は復縁しません。」

「何だと?復縁しない?なぜだ?もう島田香織が好きじゃないのか?」

藤原航は今、煩わしさで頭がいっぱいで、躊躇なく電話を切った。

藤原航は馬鹿ではなかった。昨夜の島田香織の冷たい態度で、一つのことに気付いた。島田香織は本当に自分のことを愛していないのかもしれない。

さらに今朝、富田悠太から送られてきた写真で、陸田健児が朝五時に島田香織のマンションから出てくる様子が写っていて、彼の気持ちは一気に底まで落ちた。

たとえ島田香織が自分を愛していなくても、努力すれば彼女と一緒になれるかもしれないと思っていたが、今朝の写真で、彼は自分と島田香織の関係が既に取り返しのつかないほど遠ざかってしまったことを痛感した。

その写真が陸田健児の意図的な仕業だとわかっていても、認めざるを得なかった。陸田健児の勝ちで、自分は完敗だった。