鈴村秀美はずっと島田香織を義理の娘として見てきました。藤原航が島田香織のことを好きだということも知っていて、二人が復縁することを望んでいました。
しかし、そのことは口に出せませんでした。
二人の感情の問題に口を出したくなかったので、ずっと黙って俯いていました。
「島田香織のせいで、藤原航の面目は丸つぶれだ。藤原航の母親として、何かすべきではないのか?」藤原おじいさんは冷たい表情で言い、鈴村秀美の顔を見つめました。「鈴村秀美、お前の夫はまだ生きている。もし彼が離婚を持ち出したら……」
鈴村秀美は恐れおののいて藤原おじいさんを見つめ、顔には驚きが満ちていました。
鈴村秀美のこの間抜けな様子を見て、藤原おじいさんはますます腹が立ちました。鈴村家が名門でなければ、こんな愚かな女を藤原家に入れるはずがなかったのです。
しかし、鈴村秀美は愚かではありますが、言うことを聞くという取り柄がありました。
藤原おじいさんは密封された薬を一粒、鈴村秀美の前に差し出して言いました。「島田香織と会ったときに、なんとかしてこれを飲ませるんだ。」
鈴村秀美は驚いたように、紙のように真っ青な顔をして、不安そうにテーブルの上の薬を見つめ、また藤原おじいさんを見ました。「お父様、これは何ですか?」
「余計なことを考えるな。私の言う通りにすればいいだけだ。」藤原おじいさんはいらだたしげに言いました。
「でも、もしも……」
鈴村秀美の言葉が終わらないうちに、藤原おじいさんは言いました。「安心しろ、死ぬような薬じゃない!」
「お父様、なぜ島田香織に薬を飲ませるんですか?」鈴村秀美は不安そうに尋ねました。
「それは聞かなくていい。お前は島田香織に会いに行くだけでいい。私が人をつけておく。後は私が処理する。」藤原おじいさんはいらだたしげに厳しい口調で言いました。「いいから、今すぐ彼女に会いに行け!」
藤原おじいさんにそう言われ、鈴村秀美は震える手でその薬を取り、ぼんやりとした様子で藤原おじいさんの書斎を出ていきました。
藤原おじいさんは鈴村秀美がドアの所まで来たのを見て、もう一度念を押しました。「当時、私が力を尽くしてお前を藤原家の奥方の座に据えたんだ。こんな些細なことも出来ないのなら、その座にふさわしくないということだ。」