206 片思いのメッセージ

藤原航は冷たい表情で家政婦が去っていくのを見つめ、視線が徐々に棚の上の携帯電話に落ちていった。歩み寄ってイライラしながら携帯をゴミ箱に投げ入れた。

一時間後、藤原グループにて。

藤原航がオフィスに戻ってきたところに、林楠見が書類の束を抱えて入ってきた。一番上には映画『戦神』の契約書が置かれていた。

林楠見は契約書に目を通し、躊躇いながら藤原航を見て、おそるおそる尋ねた。「この映画はまだ島田さんを起用するんですか?」

藤原航の冷たい視線が向けられた途端、林楠見は怖くなって即座に頭を下げた。彼は慌てて言い訳を見つけ、足早に外へ向かった。

まったく、怒っている藤原社長なんてもう二度と見たくない。本当に怖すぎる。

オフィスには藤原航一人だけが残された。

藤原航は契約書の表紙にある「戦神」の二文字を見つめ、眉をしかめながら、上着のポケットからゴミ箱に捨てたはずの携帯電話を取り出した。