林楠見は緊張しながら藤原航のオフィスのドアの前に来て、ノックをし、中からの許可を得てから、おそるおそる中に入った。
「藤原社長、お呼びでしょうか。」林楠見が入ると、藤原航が古い携帯電話を見つめているのが目に入った。
これはまた何の状況だろう?
社長が携帯電話を見て何をしているのだろう?
彼は何も聞けず、ただおとなしくその場に立っていた。
「ネット上の西部の土地の件について、押さえておいてくれ。」藤原航は携帯電話から目を離さず、顔も上げなかった。
「承知しました。」林楠見は素直に答え、早く出て行きたくてたまらなかった。
「一人の人を十年以上好きになったことはあるか?」藤原航は何かを思い出したように、目を上げて林楠見に尋ねた。
「十年ですか?」林楠見は驚いて、社長がなぜこんなことを聞くのか分からず、社長が彼の恋愛事情を探ろうとしているのかと思い、考えてから言った。「社長、私はそこまで一途ではないと思います。私が誰かを好きになっても、長くて一年程度です。」