今日は陣内美念の誕生日で、美念は賑やかなのが好きなので、カラオケで誕生日パーティーを開くことにした。
来ていたのは彼女たちのサークルの友達で、島田香織は少し酒を飲まされ、部屋の中があまりにも暑かったので、美念に一言告げて、トイレに向かった。
トイレから出てきたところ、正面からビール腹の男が歩いてきて、その男は全身アルコールの臭いを漂わせていた。
「ここのスタッフは本当にケチだな、こんな可愛い子を紹介してくれないなんて!」
男は下品な笑みを浮かべながら、香織の手を掴もうとしたが、香織が避けると、「お嬢さん、本当に綺麗だね。友達になろうよ。部屋でもっと親密に話さない?」
この男は40代くらいで、太っていて、鼻の上には眼鏡をかけ、笑うと黄ばんだ歯が見え、吐き気がするほど気持ち悪かった。
香織が何か言おうとした時、横から誰かが現れ、中年男性の落ち着きのない手を掴んだ。
「消えろ!」
酔っ払った中年男性は、うっとりした目つきで横にいる男を見て、にやにや笑いながら、「若いのもなかなかいいね、三人で楽しもうか?」
香織は中年男性の言葉を聞いて、笑いを堪えながら横にいる藤原航を見た。
藤原航が誘われたのだ。
香織は、この中年男性が男女両方に興味があるとは思わなかった。
藤原航は顔を青ざめさせ、手の力をさらに強めた。
腕を掴まれた中年男性は痛みで一瞬にして目が覚め、目の前の二人を見て、息を飲んだ。
まさか藤原航と島田香織に手を出すなんて。
この二人は毎日トレンド入りしている有名人で、この二人を知らないなんて、本当にバカだった。
中年男性はすぐに謝罪の姿勢を見せ、深々と頭を下げた。
藤原航は冷たい表情で中年男性の手を放し、逃げ去る中年男性の背中を見つめながら、表情は暗かった。
藤原航は香織の方を向き、携帯電話の200通以上のメッセージを思い出し、複雑な気持ちになった。
「大丈夫か?」藤原航は漆黒の瞳で香織を見つめ、体の横に置いた手を無意識に握りしめ、緊張で手のひらに汗をかいていた。
香織は礼儀正しく藤原航を見て軽く微笑んだ。「ありがとう」
藤原航には香織の笑顔が表面的なものだと分かった。彼女の目には以前のような笑みの色がなく、昔彼に向けていた笑顔とは全く違っていた。