232 私はあなたが好き!

島田香織は岡田雪が人違いをしているに違いないと思った。

藤原航のあの薄情な性格で、彼女を救うためにそんなにたくさんのことをするはずがない。

彼女と藤原航が本当に愛し合っているなんて、何を言っているの?

岡田雪は愛し合うということが何なのか分かっているの?

愛し合うというのは二人が互いに愛し合うこと。藤原航が彼女を愛している?

そんなことありえるの?

島田香織が曲がり角まで来て振り返ると、黄色い街灯の下で、藤原航は彼女をずっと見つめていた。

彼は彼女が見ているのを見て、薄い唇を上げ、目に笑みを浮かべた。

なぜか、島田香織は不思議な感覚を覚えた。彼も以前、こんな風に自分を見つめていたような気がした。

島田香織はすぐにそんな根拠のないことを頭から追い払った。突然、携帯が鳴り、陣内美念からの電話だった。

電話に出ようとした時、藤原航が近づいてくるのが見えた。

藤原航は彼女の携帯を一瞥して、口を開いた。「新婚旅行の時のことを本当に覚えていないの?」

「どういう意味?」島田香織は眉をひそめ、困惑して藤原航を見た。

「香織、俺はお前が好きだ。ずっと前から好きだった。」

島田香織は驚いた表情で藤原航を見つめた。生きている間に藤原航から告白を聞けるとは思ってもみなかった。

しかし島田香織は藤原航が本当に滑稽だと感じた。離婚してこんなに経つのに、藤原航は彼女のことが好きだと言う?

冗談じゃない。

いつ彼女のことを好きだったというの?

好きだった時に、藤原家の人に虐められるのを放っておいた?

好きだった時に、世界中の人に彼女を罵らせた?

好きだった時に、彼女の説明も聞かずに、祠堂で一晩中跪かせた?

そんな好きは要らない。

島田香織は携帯を握りしめ、冷たい表情で藤原航を見つめ、バッグを持って立ち去ろうとした。

「香織」藤原航は島田香織の行く手を遮り、躊躇いながらペンダントを彼女の手に渡そうとした。「これは…」

島田香織は藤原航の手を振り払い、藤原航の手にあったペンダントは空中で美しい放物線を描いて湖に落ちた。

藤原航は呆然とした表情でペンダントが落ちた方向を見つめた。

島田香織は唇を噛み、冷たく言った。「もう私に関わらないでください!」

島田香織は容赦なく遠ざかっていき、藤原航を見ることもなかった。