231 記憶の欠落

島田香織は深いため息をつき、外の新鮮な空気を吸って、頭もすっきりしてきた。

「私の車で行きましょう」と島田香織は車のキーを取り出しながら言った。

藤原航は右手を差し出し、静かに島田香織を見つめた。

島田香織は藤原航の細長い手を見つめ、一瞬昔を思い出したかのように、躊躇いながら自分のキーを引っ込めた。

「あなたの車にしましょう」と島田香織は黙って車のキーをしまい、目が暗くなった。

「いいよ」と藤原航は特に意見もなく答えた。

島田香織は藤原航の車に乗り、助手席に座った。

藤原航と結婚して何年も経つが、彼の助手席に座ったのは数えるほどしかない。今思えば、彼女と藤原航はまるで他人同士のようだった。

しばらく走ると、島田香織はまた頭がぼんやりし始め、顔も熱くなってきた。

彼女は藤原航の方を向いて尋ねた。「窓を開けてもらえますか?」