島田香織は最初にペンダントを切り取ろうと思ったが、はさみをペンダントに近づけるたびに、忍びなくなった。結局、ペンダントには何の罪もない、悪いのは藤原航だ。
藤原航は島田香織の言葉を聞いて、まぶたを少し伏せ、瞳の中の笑みを隠した。
彼は前にわざとネックレスを壊したのは、島田香織にずっとペンダントをつけていてほしかったからだ。ただし、今は島田香織の前でそれを直接言えない。「何を言っているのか分からないけど、外すの手伝おうか?」
藤原航に外してもらう?
島田香織は冷たい目で藤原航を見た。彼に近づく機会を与えるつもりはない。後で陣内美念に外してもらえばいい。「結構です」
藤原航は島田香織にお花のお茶を注ぎ、彼女の前に差し出した。「胃に良いよ」
島田香織は携帯を取り出してゲームを始めた。藤原航の言葉は、まるで耳に入らないかのように無視した。
料理が運ばれてきて、島田香織は箸を取り、一口食べただけで箸を置き、冷静に藤原航を見つめて言った。「もう食べました。先に失礼します」
島田香織はバッグを手に取り、躊躇なく外へ向かった。
「島田さん」藤原航はその場に座ったまま、個室の入り口まで来た島田香織の方を向いて言った。「契約精神はどうしたんですか?」
島田香織は振り返って藤原航を見つめ、眉を上げて軽く笑いながら言った。「藤原社長から学んだことですよ。藤原社長、もう卒業できましたか?」
島田香織の顔から笑みが消え、個室のドアを開けて、躊躇なく出て行った。
島田香織が数歩も歩かないうちに、隣の個室から酒臭い男が出てきて、その男は出るなり島田香織を見つけた。
「おや、お嬢ちゃん、なかなかいい女だな」男は島田香織を見て、目を輝かせ、口元に笑みを浮かべた。
島田香織はその男を避けて通ろうと思った。結局、その男は酔っているのだから、酔っ払いと関わる必要はない。
「お嬢ちゃん、行かないでよ。おいで、兄ちゃんが可愛がってやるよ!」男はそう言いながら、手を伸ばして島田香織の腕を掴もうとした。
この時、個室から出てきた藤原航は、元々島田香織を追いかけるつもりだったが、島田香織が酔っ払いにからかわれているのを見て、反射的に前に出て、その男を蹴り飛ばした。
島田香織は振り返って藤原航を一目見ると、何も言わずにそのまま立ち去った。