250 思いやり
鈴村秀美が嫁いできた時、持参金は豊かで、藤原おじいさんもこの縁談に満足していた。
その後、藤原のお父さんは外で他の女性と過ごすようになり、鈴村秀美は一人で家に残り、精進料理を食べ仏を拝む日々を送っていた。この数年は質素な生活を送っていたが、藤原家を離れても裕福な暮らしができるはずだった。
藤原航も鈴村秀美のここ数年の苦労を理解していた。ただ、鈴村秀美の資産を考えれば、彼女が藤原家に留まる必要はなかった。
「お母さん、なぜ藤原家を離れないの?」藤原航はそう思い、そのまま尋ねた。
藤原航は鈴村秀美の表情が変わるのを見て、目に申し訳なさが浮かび、説明した。「僕が思うに、お母さんはお金もあるし、僕と昭子も大きくなったから、ここに縛られている必要はないと思うんです。」