275 彼女を諦めない

陸田健児は藤原航の言葉を聞いて、思わず苦笑いを浮かべた。

藤原航はどれほど自負心が強いのか、彼が島田香織を好きなのは、ただ藤原航に対抗するためだと思っているのか?

陸田健児は冷笑して、一字一句はっきりと言った。「藤原、今言っておくが、俺が先に彼女に出会ったんだ。」

陸田健児は藤原航とこれ以上争いたくなかった。島田香織に見られるのが心配だった。

そう言って、陸田健児は藤原航に冷たい視線を送り、その場を去った。

藤原航はその場に立ち尽くし、陸田健児の背中を見つめながら、表情は一層暗くなった。

島田香織は十一年前から自分のことを好きだった。その頃、陸田健児なんて存在しなかったのだ。

藤原航はそう考えながら、眉間にしわを寄せた。

十一年前、自分のことを好きな女性は多かったが、島田香織のようにこれほど長く好きでいた人はほとんどいなかった。