藤原航は少し黙ってから、ようやく口を開いた。「怪我をしたんだ」
島田香織は少し戸惑い、藤原航が可笑しく思えた。「怪我したなら医者に行けばいいでしょう。私は医者じゃないんだから、私に言っても意味ないわ」
そう言うと、島田香織は藤原航を無視して、彼の横を通り過ぎて中に入ろうとした。
しかし数歩も進まないうちに、腕を掴まれた。
振り返ると、藤原航が彼女の腕をしっかりと掴んでおり、少し傷ついた目で見つめていた。
「本当にそんなに冷たいの?少しも気にかけてくれないの?」藤原航の瞳に懇願の色が浮かんだ。
島田香織は藤原航を見つめ、藤原家にいた頃の自分を思い出した。あの時も彼女は同じように藤原航の関心を得たいと思っていた。
心が死んでいなければ、どうして藤原航と藤原家を去ることができただろうか?