326 逃走

「それはよく分からないわ。警察署には誰もいないの。昭子、私は嫌な予感がするわ。早く兄さんを探した方がいいわ。もし何か起きたら、兄さんが助けてくれるはずよ!」

藤原昭子は適当に相づちを打って、電話を切った。

今、兄を探しに行けば、藤原航にまた家族の掟で罰せられるかもしれない。

実は昨日、鈴村凛と一緒に人を探しに行ったことを少し後悔していた。ただ、島田香織が苦しむ姿を見たかっただけなのに。

藤原昭子は島田香織を初めて見た時のことを覚えていた。島田香織のあの顔は本当に目立ちすぎていた。

自分は藤原家のお嬢様なのに、島田香織は田舎者の野良少女に過ぎない。なのに、島田香織の隣に立つと、まるで花の傍らに生える雑草のように、存在感がなかった。

藤原昭子は考えた末、藤原家の力を使わなければ、自分は刑務所に入れられるかもしれないと。