そのため、藤原おじいさんは現在の税関総署副総監が交代したことを知らなかった。
江田千治?
藤原おじいさんはこの名前にどこか聞き覚えがあると感じていた。突然、閃いたように思い出した。江田千治は島田香織の従弟だった。
「どのくらい差し止められた?」藤原おじいさんは冷たい表情で隣のソファに座った。
「輸出予定の13ロットの製品がすべて検査のため差し止められました」藤原航は平然と言いながら、携帯を取り出して林楠見にメッセージを送った。
13ロット?
藤原おじいさんは驚きのあまり顎が外れそうになった。落ち着きを取り戻してから、こう言った。「きっと島田家が我が藤原家に警告を送ってきたんだ」
藤原おじいさんの表情は一層険しくなり、島田香織が先ほどここに来たことを思い出し、怒り心頭に発して言った。「しかしこれは別問題だ。島田香織のあの小娘が朝早くから人を連れて押しかけてきて、脅しをかけてきた。我が藤原家を何だと思っているんだ?」
藤原航は立ち上がり、携帯をポケットに入れ、冷ややかな表情で少し離れた場所に座っている藤原昭子を見つめた。「お前が何をしでかしたのか、自分でよくわかっているだろう。もう海外に行く準備をしているんだから、これからはずっと海外で暮らすんだな」
藤原昭子は動揺しながら藤原航を見つめ、その言葉を聞いて飛び上がり、大声で叫んだ。「いやよ、海外なんて行きたくない!」
藤原航はそう言うと、外へ向かって歩き出した。
藤原航が出て行った直後に、警察が来た。
藤原おじいさんは警察から藤原昭子の所業を聞き、怒りで顔を真っ赤にし、即座に決断を下し、一人のメイドを藤原昭子の身代わりとして差し出した。
藤原昭子は本当に自分が刑務所に入ることを心配していたが、警察が立ち去ったのを見て、やっと安堵の息をつき、藤原おじいさんの方へ歩み寄った。
「おじいさま」藤原昭子は涙目で藤原おじいさんを見つめ、「申し訳ありません。私が悪かったです」
藤原おじいさんは複雑な表情で藤原昭子を一瞥し、何も言わずに、藤原執事に支えられながら書斎へ戻っていった。
藤原航は車を運転しながら、頭の中は混乱していた。特に島田香織と陸田健児が一緒にいる姿を思い浮かべると。
……