343 躊躇

島田香織は藤原航の側について歩き、階段を見つめ続けていた。彼女は、これが今まで歩いた中で最も難しい階段だと誓った。

彼女が見えるのは足元の二、三段の階段だけで、階段の雪は掃除されていたものの、すぐにまた大雪に覆われてしまった。

登るのは易く、下るのは難しい。

藤原航は階段に立ち、白雪に覆われた階段を見つめ、少し躊躇した。

彼一人で下山するなら全く問題ないが、島田香織と一緒に下山するとなると、話は別だった。

距離は短いように見えても、危険度は非常に高かった。

スタッフや他の観光客も、降り続ける雪を見て、躊躇い始めた。

藤原航は横のボディーガードを見て、人々に手を振った。

ボディーガードは察して、ロープを藤原航に渡し、藤原航は手際よく自分と島田香織の体にロープを結んだ。