361 泥棒

アンナは満足そうな笑みを浮かべた。

島田香織は傍らに立ち、陸田健児のその様子を見ながら、以前の彼が自分にもこんな風だったことを思い出した。

陸田健児はやっぱり誰にでも優しいプレイボーイだわ!

島田香織が立ち去ろうとした時、アンナの体から漂う匂いに気づき、瞳に一瞬の驚きが走ったが、すぐに消えた。「お話を続けて。私は用事があるので、先に失礼します」

話しながら、島田香織はアンナとすれ違った。

アンナの体からの匂いはより強くなっていた。それは媚薬の匂いだった。

島田香織は心の中で不思議に思った。以前アンナの体からは媚薬の匂いがしなかったのに、今はある。しかも服も着替えていないのに。

しかし、島田香織が遠くへ行く前に、リンダが険しい顔で近づいてきた。

「島田お嬢様、お話があります」リンダは冷たい表情で島田香織を見つめ、怒りを込めて言った。

島田香織は困惑した様子でリンダを見て、眉をひそめた。「リンダさん、何かご用でしょうか?」

「島田お嬢様、あなたは島田家のお嬢様で、有名な大スターですよね。十数万円のネックレスなんて気にならないでしょう!」リンダは冷たい目で島田香織を見つめ、怒りを抑えながら言った。

島田香織はリンダの言葉を聞いて、目を丸くし、困惑して尋ねた。「それはどういう意味ですか」

「字面通りの意味です。今日のチャリティーパーティーに来ている方々は皆お金持ちです。はっきり言えば島田お嬢様の評判に関わりますから、早めに元の場所に戻していただけませんか!」リンダは言い終わると、その場を立ち去ろうとした。

「リンダさん、何か言いたいことがあるなら、はっきり言ってください。遠回しに言う必要はありません」島田香織はその場に立ったまま、冷たい表情でリンダを見つめた。

リンダの瞳は怒りに満ちていた。彼女は怒りを抑えながら、物を盗んだ人がこんなにも開き直る態度を見るのは初めてだと思った。

リンダは振り返り、島田香織の顔に視線を向け、よそよそしい笑みを浮かべた。「島田お嬢様、私の部下があなたのドレスを汚してしまったのは申し訳ありませんが、だからといって更衣室にあった私の19万円のネックレスを持ち去る必要はなかったはずです!」

「あなたのネックレスなど見ていません」島田香織は淡々と言った。