島田香織は以前この香りを嗅いだことがあった。藤原航と初めて一緒に過ごした夜、この香りを感じたのだ。
その後、藤原航と一緒にコーヒーショップの個室に閉じ込められた時も、同じ香りを嗅いだ。
誰が彼女を陥れようとしているのか?
こんな卑劣な手段を使うなんて。
なんて陰険な策略!
もし外にいる時に長時間この香りを嗅いでいたら、薬が効いてきて、その時には熱くて苦しくなって、ひょっとしたら人前で服を脱いで恥をかくところだった!
島田香織は服を手に取り、横で払ってみると、灰色のタイル床に粉が落ちた。彼女の表情は一層暗くなった。
ドライヤーをドレスに向けて吹きかけると、さらに多くの粉が飛び散った。
島田香織はバッグから薬を取り出した。これは以前特別に作らせた清心鎮靜丸で、これを飲めば薬の粉の影響を受けないはずだった。
全てを済ませた後、島田香織は薬を口に入れ、ゆっくりとドレスを着た。
島田香織が中から出てくると、リンダが横から歩いてくるのが見えた。
「わぁ、島田お嬢様は流石に女優の顔面偏差値の天井ですね。このドレス、本当にお似合いです」リンダは目が細くなるほど笑顔で言った。
周りの多くの人がリンダの声を聞いて振り向くと、島田香織がベアトップの紫色のドレスを着ているのが目に入った。
ドレスは前が短く後ろが長く、後ろは足首まで、前は膝上まであり、すらりとした白い脚が露わになっていて、息を呑むほど美しかった。
この紫のドレスは彼女のために作られたかのようで、彼女の持つ優雅な気質を存分に引き立てていた。
アンナは少し離れた場所に立ち、認めたくはなかったものの、目の前の島田香織は、まさに神が創り出した最高傑作で、誰もが目を奪われずにはいられなかった。
アンナは今になって気づいたことがあった。以前、島田香織に白いドレスが似合わないと言ったが、それは間違いだった。あの時はドレスショップの照明が暗すぎて、白いドレスが彼女の美しさを引き出せていなかっただけだった。
輝かしい島田香織を見つめながら、アンナは彼女が生まれながらにして人々の注目を集める存在で、どんな服を着ても高級感を醸し出せるのだと感じた。
元々アンナは今日陸田健児を連れてここを離れるつもりだったが、今、その考えを変えた。