第360章 策略

島田香織は以前この香りを嗅いだことがあった。藤原航と初めて一緒に過ごした夜、この香りを感じたのだ。

その後、藤原航と一緒にコーヒーショップの個室に閉じ込められた時も、同じ香りを嗅いだ。

誰が彼女を陥れようとしているのか?

こんな卑劣な手段を使うなんて。

なんて陰険な策略!

もし外にいる時に長時間この香りを嗅いでいたら、薬が効いてきて、その時には熱くて苦しくなって、ひょっとしたら人前で服を脱いで恥をかくところだった!

島田香織は服を手に取り、横で払ってみると、灰色のタイル床に粉が落ちた。彼女の表情は一層暗くなった。

ドライヤーをドレスに向けて吹きかけると、さらに多くの粉が飛び散った。

島田香織はバッグから薬を取り出した。これは以前特別に作らせた清心鎮靜丸で、これを飲めば薬の粉の影響を受けないはずだった。

全てを済ませた後、島田香織は薬を口に入れ、ゆっくりとドレスを着た。

島田香織が中から出てくると、リンダが横から歩いてくるのが見えた。

「わぁ、島田お嬢様は流石に女優の顔面偏差値の天井ですね。このドレス、本当にお似合いです」リンダは目が細くなるほど笑顔で言った。

周りの多くの人がリンダの声を聞いて振り向くと、島田香織がベアトップの紫色のドレスを着ているのが目に入った。

ドレスは前が短く後ろが長く、後ろは足首まで、前は膝上まであり、すらりとした白い脚が露わになっていて、息を呑むほど美しかった。

この紫のドレスは彼女のために作られたかのようで、彼女の持つ優雅な気質を存分に引き立てていた。

アンナは少し離れた場所に立ち、認めたくはなかったものの、目の前の島田香織は、まさに神が創り出した最高傑作で、誰もが目を奪われずにはいられなかった。

アンナは今になって気づいたことがあった。以前、島田香織に白いドレスが似合わないと言ったが、それは間違いだった。あの時はドレスショップの照明が暗すぎて、白いドレスが彼女の美しさを引き出せていなかっただけだった。

輝かしい島田香織を見つめながら、アンナは彼女が生まれながらにして人々の注目を集める存在で、どんな服を着ても高級感を醸し出せるのだと感じた。

元々アンナは今日陸田健児を連れてここを離れるつもりだったが、今、その考えを変えた。