アンナは群衆の中を見渡し、最後に島田香織の顔に視線を落とした。彼女は隣の陸田健児を見ながら、無邪気に尋ねた。「健児お兄さん、噂の彼女がいるみたいだけど、挨拶に行かない?」
陸田健児はアンナの言葉を聞き、彼女の視線の先を見ると、島田香織と藤原航が一緒に立っているのが見えた。近づこうとした時、チャリティーパーティーの会場のドアが開いた。「いいよ」
アンナは陸田健児をずっと見つめていた。彼の言葉を聞いて微笑んだが、その笑顔は目には届いていなかった。
チャリティーパーティーの扉が開いたため、全員がそちらの方向へ移動し始めた。
島田香織は入場する際、ダウンコートを脱ぎ、中に着ていたライトグリーンのドレスを見せた。
後ろに並んでいたアンナは首を伸ばし、島田香織のドレスを見て、目に狡猾な笑みが浮かんだ。
「何を見てるの?」陸田健児は興味深そうに尋ねた。
アンナは陸田健児の言葉を聞いて、明るい笑顔を浮かべた。「今、島田お嬢様を見てたの」
陸田健児は俯いたまま黙っていた。
アンナは島田香織が似たような色のドレスを着ているだけで、昨日自分が選んだドレスではないことに気づき、続けて言った。「今日の島田お嬢様は、ライトグリーンのドレスを着て、まるで天使みたい。私、羨ましいわ。私も彼女みたいに綺麗だったらいいのに」
「君は十分綺麗だよ。他人と同じである必要はない」陸田健児は静かに言った。今は、アンナが以前言った通り、このチャリティーパーティーが終わったら帰ってくれることを願うばかりだった。
アンナが国内にいる限り、陸田健児は島田香織に会いに行くことも難しかった。
今回のチャリティーオークションには安川市のすべての名士が招待されていた。
複雑で古風な照明は黄色みがかっており、チャリティーオークション会場全体が特別に温かい雰囲気を醸し出していた。
チャリティーオークション開始まで、まだ30分の待ち時間があった。
島田香織と藤原航は最前列の中央に座っていた。島田香織は彼と特に話すこともなく、スマートフォンを見ていた。
そのとき、華やかな姿が横から近づいてきて、熱心に挨拶をした。「島田お嬢様、また会えましたね」
アンナは島田香織の隣に座り、甘い笑顔を浮かべながら、彼女の手を握った。「私たち、本当に縁があるわね」