先ほど島田香織が立ち上がって話をしたことで、すでに藤原航が島田家の陣営にいることを示していた。
来客たちは藤原航が島田家の婿なのか、それとも島田家の会社の社員なのか、とても気になっていた。
来客たちは散っていったものの、彼らは密かに藤原航のことについて話し合っていた。
「藤原航は災い転じて福となすってことかな?彼が藤原家にいた時、島田香織は彼を見向きもせず、結婚式で恥をかかせたのに、今では島田香織が彼を守るような様子を見ると、二人は良い関係になりそうだね。島田香織は本当に藤原航のことが大好きなんだろう。」
「そうね、田中安尾と鈴木成一が落井下石だったけど、私がはっきり見たところ、最初に手を出したのは藤原航よ。彼が田中安尾に赤ワインをかけて、田中安尾が反撃したの。それに、最初に田中安尾の手を叩いたのは島田香織だったわ。」
「彼女の力は本当に強かったわね、私まで痛そうに感じたわ。」
「島田香織の藤原航への愛は本物ね。今でも藤原航を愛しているなんて、もしかしてマゾヒスト的な傾向があるのかしら!」
「私が聞いた話では、島田香織は藤原航に感動したらしいわ。彼女が休暇中に山で遭難した時、藤原航が山から背負って降ろしてきたんですって。ヒーローが美女を救う、というわけで、彼女が心を動かされたのも当然ね。」
……
群衆の中に立ち続けていた陸田健児は、手に持ったグラスをますます強く握りしめ、遠くにいる島田香織を見つめながら前に進もうとした時、突然誰かの視線を感じた。
陸田健児は深く息を吸い、何でもないふりをして別の方向に歩き出した。
この群衆の中にアンナのスパイがいる、今は島田香織に近づきすぎてはいけない。
陰で立っていた陣内美念は人々が散っていくのを見て、嬉しそうに島田香織の前に駆け寄り、島田香織に向かって親指を立てながら興奮した様子で言った:「香織、すごかったよ!」
島田香織は陣内美念に余計なことを言うなという目つきを送った。
藤原航は陣内美念が来たのを見て、小声で言った:「状況を見てくる。」
島田香織は軽く頷いた。
藤原航が去ると、陣内美念は笑顔で島田香織を見つめ、興奮した様子で言った:「香織、藤原航は本当にいい人だよ。あなたと彼は…」