368 ダメ!

藤原航は普段から無表情で仏頂面をしていたが、今の彼の目は笑みに満ちていた。

島田香織ははっきりと見た。彼の目の中は彼女で満ち溢れていた。

この瞬間、島田香織の心は揺れ動いた。

島田香織は自分の気持ちをよく分かっていた。分かっているからこそ、切なく感じた。

陸田健児は彼女にとても優しく接してくれた。彼女は当然陸田健児と一緒にいるべきで、今は愛情がなくても、時間が経てば自然と芽生えるかもしれない。

でも彼女の陸田健児に対する感情は感謝だけで、心は大抵の場合、波風が立たなかった。

しかし藤原航といると違った。彼の一目で心臓が思わず早鐘を打ち、彼の感情に自分の感情も左右された。

でも彼女はもう大人になった。もう恋愛を一番に考えることはなく、他にもっと重要なことがあった。