380 怒り

藤原航は島田香織の顔に視線を落とし、静かに言った。「ずっと昔、ある少女が蓮の朝食屋でいつもこの二品を注文していたんだ」

藤原航が島田香織に気付いたのは、夏でも彼女だけが一人でそこに座って熱々の料理を食べていたからだった。

後に自分も一度食べに行ったが、確かに美味しかった。

島田香織は少し驚いた。

蓮の朝食屋。

中学生の頃、毎朝通っていた店で、そこに座っていると、藤原航が車から降りて学校に入っていく姿が見えた。

その店には彼女の大好物があり、さらに会いたい人も見られた。

長い年月を経て、島田香織は藤原航がその時から自分のことを知っていたとは思わず、躊躇いながら尋ねた。「私のことなんて気にも留めていないと思っていました」

藤原航は優しく笑い、甘やかすような口調で言った。「実は、ずっと前から気付いていたんだ」