406 調査

島田香織はレストランから出てきた。彼女は誰とも争いたくなかったが、中島夏美は図々しすぎた。

もし彼女が先に中島夏美に手を出さなければ、熱いお茶をかけられていたのは自分だったはずだ。

島田香織は中島夏美の崩壊した様子を思い出し、思わず口角が上がり、足取りも軽くなった。

島田香織がオフィスに戻って座ると、奈奈さんは彼女が嬉しそうな様子を見て、探るように尋ねた。「島田お嬢様は陸田さんとデートでしたか？」

奈奈さんはそう言いながら、傍らに座って仕事の報告をしようとしていた藤原航をちらりと見た。

彼女の言葉の意図は単純で、藤原航に諦めてもらい、もう島田お嬢様に近づかないようにということだった。それに島田さんも、島田お嬢様と藤原航を近づけないようにと暗に示していたのだ。

島田香織は奈奈さんの言葉を聞いて、少し躊躇してから笑って答えた。「違います。」

藤原航の緊張した体がわずかに緩んだ。

奈奈さんは目に戸惑いの色を浮かべ、続けて尋ねた。「では、お嬢様は...」

島田香織は奈奈さんを見て言った。「さっきはただ、小人を懲らしめただけです。」

奈奈さんはそれを聞いて、口角も上がり、同意して言った。「確かにそれは喜ばしいことですね。」

奈奈さんはそう言いながら、藤原航の方を向いた。島田香織が藤原家に手を出すたびに喜ぶということを、藤原航に伝えたかったのだ。

「奈奈さん、ある人を調べてもらえますか。」島田香織は奈奈さんを見上げ、落ち着いて言った。

「誰をですか？」奈奈さんは不思議そうに尋ねた。

「中島夏美です。」島田香織は冷静に答えた。

島田香織は安川市の中島家も有名だと漠然と覚えていた。重工業を営んでいると聞いている。中島夏美があれほど自信満々なのは、中島家の実力が侮れないということだろう。

「なぜ突然彼女のことを調べたいのですか？」奈奈さんは困惑して尋ねた。彼らの会社は中島家とは取引がないのだから。「彼女は...」

奈奈さんの隣に座っていた藤原航の目が輝いた。彼と島田香織は心が通じ合っているに違いない。二人とも中島夏美を調べようと考えていたのだから。

きっと島田香織の心の中には自分のことがあるはずだ。そうでなければ中島夏美のことを調べようとは思わないはずだ。