第36章 不意打ちの強引なキス

二十分後、工藤みやびは麺を盛り付け、書斎のドアをノックした。

「藤崎社長、夕食ができました」

藤崎雪哉はドアを開けて出てきて、ダイニングに入ると温かい麺の香りが鼻をくすぐり、食欲をそそった。

彼は座って数口食べると、トマトの酸味と甘みが絶妙で、卵はふわふわ、スープが染み込んだ麺は風味豊かでコシがあった。

家のコックが作るような洗練されたものではないが、家庭的な温かみのある味わいだった。

食卓の灯りは柔らかく、向かいに座る少女は今、驚くほど美しく魅力的で、彼はこれまでそれに気づかなかったことが不思議だった。

工藤みやびは彼が数口食べて動きを止めたのを見て、驚いて顔を上げた。「美味しくないですか？」

「いや、とても美味しい」

藤崎雪哉は頭を下げて麺を食べ続け、礼儀正しくスープまで残さず完食した。

食べ終わった後も、山積みの書類を処理するために書斎に戻ることなく、そのまま席に座って向かいの少女を観察し続けた。

工藤みやびは彼の視線を感じ取り、食事も美味しく感じられなくなった。

「これからは、そんなに私を怖がらなくていい」と藤崎雪哉は言った。

「……」工藤みやびは不思議そうに話している男性を見た。

藤崎雪哉は昨日から何かに取り憑かれたのだろうか？

彼女に話す口調も変だし、彼女を見る目つきも変だし……

二人の間に一分ほど沈黙が流れ、藤崎雪哉は立ち上がってコーヒーマシンからコーヒーを取りに行った。

「今夜の麺はとても美味しかった」

工藤みやびは微笑んで、食器を片付けて台所で洗い始めた。荒木雅の母親は料理が好きだったので、彼女もたくさん学んでいた。

彼女自身は工藤家で暮らしていたので、もちろん自分で料理をする必要はなかったが、ある時期、工藤司が胃腸の調子を崩したため、コックから簡単な家庭料理をいくつか特別に習っていた。

彼女は食器を洗い終え、映画学院のオンライン出願締め切りが近いことを思い出し、藤崎雪哉に尋ねた。「ネットで少し調べものをしたいのですが……パソコンを使わせていただけますか？」

「いいよ、どうぞ」藤崎雪哉はあっさりと承諾し、自分は先に洗面所に行ってシャワーを浴びた。