第51章 彼女に着信拒否された

藤崎正男は眼鏡を直し、携帯電話に映る藤崎雪哉の顔のアップを注意深く見つめた。口の傷は確かにはっきりと見えた。

「本当に、お兄さんが探しているのは彼女なの？」

「まさか父さんは兄が彼氏を見つけることを望んでいるの？」藤崎千颯は実の父親の発想に驚き、真剣に言った。「女の子だよ、それもとても可愛い女の子だ」

藤崎正男はうなずいた。「それならいい。工藤家の娘でなければ、誰と結婚してもかまわない」

藤崎奥様は夫を見つめ、厳しい表情で言った。「工藤家の娘は絶対にダメ、でも荒木雅もダメよ」

藤崎千颯は額に手を当てた。でも兄が今気に入っているのは、まさに荒木雅なのに。

彼女が何か言おうとした時、携帯電話が再び鳴った。発信者を見るとすぐに恭しく電話に出た。

「兄さん、また何か指示？」

「彼女の風邪は良くなった？」藤崎雪哉の声は低く、機嫌が良くなさそうだった。

「私は見てないから、良くなったかどうか知らないよ」

「じゃあ今見てこい」藤崎雪哉は冷たく言った。

「兄さん、もう12時近いよ。そんなに知りたいなら自分で電話すればいいじゃない」

電話の向こうで、藤崎雪哉はしばらく沈黙した後、言った。「彼女に着信拒否されたんだ」

藤崎千颯は口いっぱいの食事を含んだまま2秒ほど固まり、笑いで食べ物を吹き出してしまった。水を一口飲んで何とか飲み込み、笑いを堪えながら言った。

「じゃあアパートの電話にかければいいじゃない。今は家にいるはずだよ」

電話の向こうでまた数秒の沈黙があり、それから言った。「電話線が抜かれている」

藤崎千颯は携帯を手で覆い、お腹が痛くなるほど笑った。兄にもこんな日が来るとは。

この情けない声、なぜか聞いていて気分がいい。

「藤崎千颯、もう一度笑ってみろ」藤崎雪哉は冷たく警告した。

彼は声は聞こえなかったが、藤崎千颯が今何をしているか完全に想像できた。

藤崎千颯は咳払いをして、笑いを止めた。「あの...今日は遅いから、明日見に行ってあげるよ」

以前はどうして気づかなかったんだろう、荒木雅と兄の間がこんなに面白いなんて。

「ああ」藤崎雪哉はそっけなく返事をして、電話を切った。

藤崎千颯は携帯を置き、向かいの両親に言った。「見てよ、見てよ、海外にいても電話して彼女の風邪が良くなったか心配するなんて、こんな待遇...うちの誰かあった？」