第71章 天降る正義、荒木雅の票数逆転

中山里奈は冷たく笑い、携帯を片付けた。彼女たちが集めたわずかな票数など、薫乃の従姉妹がツイッターで一言つぶやくだけで何倍にも増えるだろう。

配信のコメント欄は、すぐに竹内薫乃のファンたちに占領された。

大谷媛が竹内薫乃の親戚だと知ると、工藤みやびのブラックスワンを必死に中傷し始めた。

[ブラックスワン、醜すぎ!]

[こんなに下手くそなダンス!]

[ブラックスワンはブス、ホワイトスワンに投票しよう]

[素人が専門家と勝負するなんて、自ら虐めを求めてる]

……

舞台上で、工藤みやびは一回転し、脚を蹴り上げ、大ジャンプをし、ほぼ完璧に演技をこなしていた。

しかし、配信のコメント欄はホワイトスワンの大谷媛を応援する内容で溢れていた。

大谷媛は傍らに立ち、工藤みやびを見ながら、顔色がどんどん悪くなっていった。

素人には分からないだろうが、彼女自身は知っていた。工藤みやびの一つ一つの動きは、自分というプロのダンサーに少しも劣らないものだった。

彼女は、みやびの実力を過小評価していたのだ。

鈴木紀子は、舞台上で演じているのが工藤みやびなのに、コメント欄は全て大谷媛を応援するもので、大谷媛の票数もどんどん急上昇しているのを見ていた。

少数の冷静な視聴者がブラックスワンの方が上手いと褒めていたが、それらは全て竹内薫乃のファンたちの罵声に埋もれてしまった。

「千晴、あなたの従弟はもう何人集められる?」

西村千晴には人気のあるゲーム配信者の従弟がいて、さっきの票数は彼が集めたものだった。

「もうあまり集められないと思う」西村千晴は歯を食いしばり、小声で言った。「父に電話して、彼のツイッターを使わせてもらうわ」

「いいよ、早く行って」鈴木紀子は何度もうなずいた。

千晴の父は少し名の知れた作詞作曲家で、何人かの歌手が彼の書いた曲を歌っていた。

彼女の父のツイッターを使って、誰かに投稿してもらえば、雅のためにかなりの人を集められるはずだ。

中山里奈と山内三琴は、大谷媛の票数が工藤みやびの数倍になっているのを見て、得意げに笑い始めた。

「まだ諦めないつもりなの?この票数差じゃ、どうやっても追いつけないわよ」

「そんな手段を使って。票集めに頼らず、実力だけで勝負したら、誰が勝つかまだわからないわよ」鈴木紀子は歯を食いしばって言った。