第70章 ずっと圧倒されている

講堂の前方で、大谷媛がステージに姿を現すと、会場からは拍手が沸き起こった。

大谷媛は音楽に合わせて落ち着き払って踊り始めた。帝都バレエ団での数年間の経験が、彼女に最も洗練された舞姿を身につけさせ、白鳥の軽やかさと優雅さを踊りの中で存分に表現していた。

ライブ配信のコメント欄は、瞬く間にコメントで埋め尽くされた。

[この踊りの技術、誰も文句ないだろ!]

[あとで文句言ってる小娘たちをやっつけてやる]

[白鳥に投票!]

[大谷女神様に投票!]

……

ライブ配信では、大谷媛の票数が急速に増えていき、わずか数分で数万票に達していた。

講堂の楽屋で、中山里奈と山内三琴たちは票数が急増するのを見て、得意げな笑みを浮かべた。

「もう5万票よ、まだ増えてる!」

「荒木雅はどうしたの?来る勇気がなかったのかしら?」中山里奈は冷ややかに笑いながら尋ねた。

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、工藤みやびはすでに西村千晴やダンス科の女子学生たちと一緒に入ってきていた。

真っ黒なバレエ衣装に身を包み、目元には濃いメイクを施し、全体的に少し不気味で妖艶な雰囲気を醸し出していた。

「荒木雅、勝てないって分かってるからって、こんな幽霊みたいな格好でステージに上がるなんて、自暴自棄になりすぎじゃない?」山内三琴は彼女の装いを見て、嘲笑した。

工藤みやびは返事をせず、鈴木紀子の側に歩み寄り、静かに呼吸を整えながら、ステージに上がる準備をしていた。

鈴木紀子は西村千晴を見て言った。「大谷媛はもう6万票近くまで来てるわ、まだどんどん増えてる。」

西村千晴は少し表情を引き締めた。「彼女たちはずっと世論を誘導してきたから、今の票数が大谷媛に偏っているのは当然よ。」

中山里奈が最初にステージに上がったのは大谷媛の味方をして、荒木雅の敵意を買うためだった。そして大谷媛が先に演技をしたことで先手を取った。

一般の観客は彼女の実力が素晴らしいと見れば、当然彼女に投票するだろう。

だから、この後荒木雅がステージに上がっても、彼女に残る票はそれほど多くないだろう。

しかも、純粋で美しい白鳥は最も人気があり、彼女は人気のないブラックスワンを演じるのだ。