第65章 「鬼火」に支配された恐怖を忘れたのか

栄誠中学校、三日間の模擬試験がようやく終わった。

工藤みやびが教室を出て携帯の電源を入れると、すぐに藤崎雪哉から電話がかかってきた。

彼女は周りを見回し、人の少ない場所に移動してから電話に出た。「藤崎さん、何かありますか?」

「試験終わったの?」

「はい」

「何時に帰る?」

「芸術試験の準備があるので、遅くなるかもしれません」と工藤みやびは答えた。

正直に言うと、彼に会いたくなかった。前回の食事の時、彼の魅力に魂を奪われそうになったから。

「わかった、夜に会おう」藤崎雪哉はそう言って、電話を切った。

夜に会う?!

工藤みやびは携帯を投げ出したい衝動に駆られた。くそっ、あまり来ないと言っていたのに、最近は三日に二回も来て、まるで同棲しているみたいじゃないか。

「雅!」