工藤みやびが舞台裏に着くと、鈴木紀子と西村千晴は興奮して駆け寄り、彼女を抱きしめ、喜びに満ち溢れていた。
「みやび、私たち勝ったよ!」
「私たち勝った!!」
ダンスクラスの生徒たちも、配信で見た驚異的な32回転のフエッテを見て、崇拝の眼差しで彼女を取り囲み、祝福と歓声を送った。
投票数ではずっと押されていて、彼女たちは負けると思っていた。
まさか彼女たちのアイドルである藤崎千明が突然配信を見に来て、さらにツイッターの公式アカウントでブラックスワンを公然と支持するとは夢にも思わなかった。
大量のファンが配信ルームに殺到し、わずか数分でブラックスワンの票数を何倍にも跳ね上げた。
工藤みやびは彼らに抱きしめられて少し息苦しくなり、小声で言った。
「座って休ませて、少しめまいがする。」
彼女はバレエを学んでいたが、ダンスの実力だけで言えば、大谷媛には及ばなかった。
しかし、彼女は武道を学んでいたため、筋肉の力のコントロールと使い方を知っており、さらにダンスの基礎もあったからこそ、驚異的な32回転のフエッテを完璧にこなすことができたのだ。
実際、今は目まいがして、足も痛くてたまらなかった。
しかし、今はもっと痛いのは大谷媛だろう、彼女の足の骨が折れる音まで聞こえたのだから。
この怪我で、彼女がまた踊れるかどうかも分からない。
鈴木紀子と西村千晴は彼女を支えて座らせ、水を渡した。「病院に行く?」
工藤みやびは水を一口飲んで、首を振った。「大丈夫、少し休めばいいから。」
ダンスクラスの女子生徒の一人がツイッターをスクロールしていると、突然驚いて目を見開き、トレンドランキングの名前を見つめた。
「なんてこと、荒木雅、あなたと私の推しが一緒にトレンド入りしてる!」
「どの推し?」工藤みやびは少し驚いた。
鈴木紀子もすぐにツイッターを開いてチェックすると、確かにトレンドトピックの20位に「藤崎千明 ブラックスワン」という文字が輝いていた。
「きゃー!さすが私の推し、天から正義を降らせて私たちを救ってくれた!」
藤崎千明のファンが最後の数分で大量に配信ルームに押し寄せなければ、彼女たちは間違いなく負けていただろう。
「でも、三の若様がどうして突然配信を見たんだろう?」ある女子生徒が不思議そうにつぶやいた。