第74章 藤崎雪哉が自ら迎えに来る

大谷媛のあの平手打ちは中山里奈を呆然とさせただけでなく、鈴木紀子たちも驚かせた。

彼女たちがまだ喧嘩を始める前に、彼女たち同士が先に殴り合いを始めたのだ。

西村千晴は工藤みやびを支え、「行きましょう、もう遅いわ」と言った。

「まだ彼女たちの喧嘩を見ていたかったのに」鈴木紀子は面白い場面を見逃すのが惜しいようだった。

大谷媛のあの平手打ちは、自分が中山里奈を殴るよりも気持ちよく見えた。

でも彼女も自業自得だ。大谷媛は彼女がこの勝負を受けたせいで怪我をして舞台で倒れていたのに、中山里奈はまったく気にかけなかった。殴られて当然だ。

鈴木紀子と西村千晴は工藤みやびを着替えに連れて行き、カーテンの外に立って尋ねた。

「みやび、大谷媛に勝てると最初から分かっていたの？」

「いいえ、ただ自分の実力で彼女に勝てると確信していただけよ」工藤みやびは着替えを終え、カーテンを開けた。「大谷媛の負けず嫌いな性格なら、最後のフエッテ・アン・トゥールで私に勝とうとするはず。そうなれば足を怪我するのは必然だったわ。彼女が足首を捻挫したら、このバレエ団の首席はもちろん無理になる。

さらに、ロイヤル・バレエ団での研修も他の人に行かせることになるでしょう。これは彼女が5年間待っていたチャンスだったのに」

あの時、彼女が荒木雅に怪我をさせ、帝都バレエ団に入る機会を失わせたのだから、今は倍返しするべきだ。

「そういうことなら、彼女たちが投票で勝っても、実際には負けたということね」西村千晴は目を輝かせて言った。

そして今夜、彼女は実力でも負け、投票でも負け、完全に敗北したのだ。

「でももし彼女が投票で勝っていたら、あなたはまだ中山里奈の雑用を1ヶ月やらなければならなかったのでは？」鈴木紀子が言った。

工藤みやびは神秘的に微笑んで、「だって、私には彼女を大人しく言うことを聞かせる切り札があるからよ」

彼女は中山美琴の写真を持っている。中山美琴にメッセージを一つ送れば、中山里奈を大人しくさせることができる。

ただ、彼女も藤崎千明がなぜ突然この件に首を突っ込んできたのか理解できなかった。

三人は荷物をまとめて学校を出ると、遠くに救急車が大谷媛を乗せて去っていくのが見えた。