今井律は彼女の行く手を阻み、表情は冷たかった。
「荒木雅、俺をなんだと思ってる?気が向いたら遊んで、気が向かなくなったら蹴り捨てるおもちゃか?」
工藤みやびは眉をひそめ、反問した。「そう、あの手紙は確かに書いたわ。でも中学3年の時に書いたのに、あなたが高校3年になってから突然彼氏面するなんて、おかしくない?」
「俺には理由がある。別れるなんて認めない」と今井律は言った。
彼は家族との約束で、大学に入るまで恋愛はしないことになっていた。さもなければ家族の決めた全てに従わなければならなかった。
彼は彼女がずっと待っていてくれると思っていたが、あの交通事故の後、彼女は彼の世界から完全に消えてしまった。
やっと今日彼女に会えたのに、彼女は他の男を好きになったと告げた。
「ねえ、どうしてあなたは人の話を聞かないの?」工藤みやびは少し怒り始めた。
「その男は誰だ?」今井律は追及した。
彼女が竹内家を出て、学校も休んでいた日々、その男と一緒にいたのか?
工藤みやびは周囲を見回し、「行きましょう、場所を変えて話しましょう」と言った。
そう言うと、今井律を連れて近くの小さな林に入った。
「今なら話せるだろう、その男は誰だ?」今井律は彼女の腕を掴んで問いただした。
「ちょっと待って」工藤みやびは明るく笑い、彼の首のネクタイに手を伸ばした。「ちょっと借りるね」
今井律は彼女が突然近づいてくるとは思わず、少女の清々しい髪の香りが漂ってきた。
彼は少女の長いまつげがかすかに震えるのを見つめ、心臓も思わず激しく鼓動し始めた。
気づいた時には、両手はすでに彼女にネクタイで縛られていた。
「荒木雅、何をしている?」
工藤みやびは手を叩いて、笑いながら言った。
「あなたと話すことなんて何もないわ。話したいなら、この木と話してなさい」
「荒木雅、その男は一体誰なんだ?」今井律はしつこく尋ねた。
工藤みやびは数歩歩いた後、振り返って警告した。「それと、もう二度と私の彼氏だなんて言ったら、殴るからね」
そう言いながら、拳を振り上げて脅した。
厄介ごとを片付けた彼女は鈴木紀子に電話をかけたが、誰も出なかった。
次に西村千晴に電話をかけたが、やはり応答がなかった。