第78章 藤崎家三の若様藤崎千明

しらゆりマンション。

工藤みやびは二日間の休みをもらって家で怪我を癒していた。夜に鈴木紀子たちとWeChatで遅くまでおしゃべりしていたため、彼女は昼近く12時まで寝てしまった。

部屋のドアがノックされるまで、布団から這い出てこなかった。

でも、この時間に、藤崎雪哉のような仕事中毒は会社にいるはずじゃないの?

彼女がドアを開けると、そこにいたのは藤崎雪哉の特別秘書、岡崎謙だった。

「荒木さん、社長があなたに食事を届けるよう言いつけました。起きて、温かいうちに食べてください」

「食事を...届ける?」工藤みやびは眉をひそめた。

岡崎謙は軽く微笑んで言った。「すでにダイニングに置いてあります。他に何もなければ、会社に戻らなければなりません」

工藤みやびはぼんやりと頷いた。「お疲れ様です」

岡崎謙を見送り、ダイニングに戻って食事をしようとした瞬間、藤崎雪哉から電話がかかってきた。

「岡崎が届けたか?」

「うん、今届いたところ」工藤みやびはテーブルの上の湯気の立つ料理を見ながら言った。「ありがとう」

「今夜はパーティーがあるから、帰りが遅くなるかもしれない」藤崎雪哉の声は温かく心地よかった。

「うん、あなた...胃が弱いから、お酒は控えめにね」工藤みやびは考えた末、それだけ言った。

「わかった」藤崎雪哉は低く笑った。「早く食べなさい、切るよ」

電話が切れると、工藤みやびは悔しそうに額に手を当て、自分の口の軽さを内心で呪った。

彼とどんな関係なの?彼が何を飲もうとあなたに何の関係があるの?

最近、藤崎雪哉がこちらに住んでいて、彼女の筋肉痛で歩きづらいのをいいことに、家の中で彼女を抱きかかえて運んでいた。

昨夜も洗面を終えて彼女を部屋まで送り、その隙に彼女の頬にキスをした。本当に他人行儀なところが全くない。

一人で食事を済ませ、数通のメッセージに返信してから、服を着替えて近くの歩行者天国にある喫茶店へ向かった。

中山里奈のあの騒動と、藤崎千明が介入して混乱させたことで、彼女は一夜にしてネット上の有名人になってしまった。

昨日だけで四つの芸能事務所から電話での誘いがあり、今日の午後に会って詳しく話し合う約束をしていた。