第77章 他人のために嫁入り道具を作る

中山美琴は電話を受けて病院に駆けつけ、帽子とマスクをつけた竹内薫乃も一緒だった。

道中、ずっとツイッターをチェックしていると、[千明ブラックスワン]のタグがトレンド10位以内に入りそうになっていた。

自分のツイッターのコメント欄には、千明のファンからの皮肉が押し寄せ、腹立たしさで胸がいっぱいだった。

病室に入るなり、彼女はマスクを外し、中山里奈に向かって怒鳴った。

「この馬鹿!こんないいチャンスを与えたのに、自分を売り出すどころか、荒木雅をトレンド入りさせるなんて」

おまけに彼女まで千明のファンに攻撃され嘲笑され、恥ずかしくてたまらなかった。

中山里奈は大谷媛に平手打ちされ、さらに竹内家純に叱られたばかりで、今また竹内薫乃に怒鳴られ、悔しくて泣き出した。

「最初はすべて順調だったのに、千明が突然公式ツイッターで荒木雅を支持したせいで、状況が一気に逆転してしまったんだ」

本来なら今夜トレンド入りするはずだった自分が、結局は他人のために嫁入り道具を作るようなもので、自分の話題性を高めるどころか、荒木雅をトレンド入りさせてしまった。

今は誰よりも辛くて悔しいけど、どうすることもできない。

あの日本の人気者・千明の一言が、ネット上でどれほどの影響力を持つか、誰もが知っていた。

山本蘭は辛い思いをしている娘を優しく抱きしめ、「媛ちゃんがステージで失敗さえしなければ、こんなことにはならなかったのに…」

「もう一度言ってみなさい。私の娘はこんな怪我をして、首席の座も失い、ロイヤル留学のチャンスまで失ったのに、まだそんなことを言うの…」

竹内家純は山本蘭が自分の娘を責めるのを聞いて、怒りに任せて殴りかかろうとした。

「もういい!」中山美琴は竹内家純を引き止め、冷たい表情で言った。

「今は媛に静かに傷を癒やしてもらいましょう。怪我が治ったら、私が彼女を海外に留学させる方法を考えます」

竹内家純は中山美琴を見て、「本当ですか?」

中山美琴はうなずいた。「今は何も考えず、ゆっくり治療に専念して。あとは私が手配します」

あの荒木雅め、私を出し抜いただけでなく、その手腕もますます大きくなってきている。

中山里奈は本田麻裕から送られてきたメッセージを見て、おずおずと言った。